

2022年に Girlpool を脱退した Harmony Tividad おばさんは2024年にスリージー(少し妖しく退廃的な)ソロアルバム「Gossip」を発表しています。それは彼女がかつて所属していた愛されるバンド Girlpool で培ってきたインディー的なルーツからの離脱して制作されたエクスペリメンタルを意味していました。しかし2025年3月彼女はスローでポップでセンシティブな曲「Where Strangers Go」を発表してそして今度はもうひとつ別に楽曲「Anything」をリリースしました。ハーモニーって実名のおばさんの口からは「Anything は献身についてのラブソングなの。醜い部分も美しい部分もぜんぶすべてになりたい。その感情の超越を描いているの。」なんだと。90年代風の控えめなギターの上で愛らしくこう歌うブスな彼女。I could be your everything / I could be your summer break / I could be too many beers / I can be the things you hate 私はあなたのすべてになれる/あなたの夏休みにもなれる/酔いすぎたビールのようにもなれる/あなたが嫌うものにもなれる
この曲を聞いて、もう十分がんばってるよ。無理しなくていいからね。がんばろうと思えるだけで、もうすごいことだよ。焦らなくて大丈夫。ちゃんと進んでるよ。あなたのペースで大丈夫だよ。今日はゆっくりしてもいい日だよ。少し休んだって、何も失われないよ。できない日があっても、それが普通だよ。ちゃんとあなたのこと見てるよ。がんばり伝わってる。今のままでも、ちゃんといいよ。つかれたら、休んでいいんだよ。どんなあなたでも大丈夫だよ。できることをできるだけでいいんだよ。がんばらない時間も大切な時間だよ。心が追いつくまで少し待ってあげよう。そんなことを思いました。
Harmony – Anything (Jun 4, 2025)
I could be your anything
Won’t you let me stay this way
Linen dress and wide landscapes
Hold your hand until it breaks
Cause my grip is so strong
I’ll kiss you til the daylight wakes
I could be your anything
Anything that makes you stay
I could be your everything
I could be your summer break
I could be too many beers
I can be the things you hate
Cause the world is so small
I’m lost inside the fake rat race
You know I’ll follow anywhere
Anywhere you want to stay
Harmony Tividad(元 Girlpool のメンバー)インディーポップ・エレクトロポップ。痛いミュージックビデオ。ポップ的実験性も強め。ノイズ的なビート、Auto Tune ・ヴォコーダー風の加工された声、シャープなシンセが特徴。ロサンゼルスやアメリカ文化、虚無・退屈・浮遊感といったテーマをキャラクター性を強めて歌うというアプローチが取られています。例えば「アメリカ文化の麻痺」「理想女性像との葛藤」「夜のパーティー/アウトサイダー的視点」など。

次の曲。Harmony がサンセットブルーバード沿いの Toi Thai Restaurant で多彩な光に包まれている姿、ハリウッドヒルズで蝶の形をしたギターを弾く姿、そして満月の光の下に立つ姿。懐かしい感じのする「Apple Pie」は詩的で誠実なソングライティングが際立っています。ハリウッド出身のおばさんがまもなく発表するより大きなプロジェクトの予告編ともいえる一曲かもしれません。Apple Pie は境界線を持つことの代償、そして自己防衛が私たちを孤独へと導くことがある。そんなテーマの曲なの。ってことらしい。
Harmony – Apple Pie (Oct 21, 2025)
I was once a good girl when I let you kiss my feet
I could see the galaxies with you on top of me yeah
no I’m never angry I just think I need some sleep
I could bend 100 words around my own defeat
yeah
she looks really pretty
yeah I heard she’s really nice
I know that you’ll fuck her over your entire life
yeah
that’s the kinda girl you gotta make sure is your wife
she won’t hold you to a standard just the way you like yeah
you know she’s apple pie
just the way you like
she wouldn’t fight
rollover just the way you like
氷がグラスの中で小さく鳴った。深夜のバー。カウンター越しの灯りが水割りの中にぼんやりと沈んでいる。さっき言われた言葉が、まだ耳に残っている。「がんばらなくていいよ。」最初は冗談みたいに聞こえた。けれどその声には何か責めない優しさがあった。
グラスを傾ける。口の中に広がるのは薄いウイスキーの苦さ。心の奥にあるのは、もっと淡い苦さ。ほんとに、がんばらなくていいのか?そう問いながら氷の音で自分の声をごまかした。私は少しだけ肩の力を抜いた。時計の針の音が、はじめて穏やかに聞こえた。がんばることも、休むことも、どちらもきっと生きることの一部なんだ。

Queenie – Vasaline
オルタナティブ・ポップのおばさん Queenie の「Vasaline」は脆さと大胆さが同居する感情の揺らぎをテーマにエレクトロニックな質感とオーガニックな感情表現を融合させた意欲作となっています。タイトルのワセリンが示唆するように垂れたおっぱいで滑らかさや保護というイメージを比喩的に用いながら人間関係における摩擦や心の防衛本能を描写。親密さと不安、欲望と自己保存がせめぎ合う瞬間を鋭くも詩的なリリックで切り取っています。ミニマルなビートにレイヤー状に重なるシンセサイザー、そして囁くようなボーカルから感情を爆発させるサビへのダイナミクスが印象的。静と動のコントラストが楽曲全体に緊張感をもたらしリスナーをドラマへと引き込みます

アイルランド系プエルトリコ人のアーティスト Jæd は、Yves Tumor のサイケデリックな変容、Kate Bush のスリリングなボーカル、そして Deerhoof の実験的ノイズロックといったさまざまな影響の渦の中から自身の音楽を引き出している。その題材は、自由奔放で唸るようなギター、ぎざぎざと切り込むドラム、渦を巻くようなボーカルランの中で、独自の視点によって巧みに描かれており、聴く者に Fiona Apple、Anna Calvi、Nadine Shah のような吸い込まれるようなソングライティングを想起させる。
Jæd – The Sting (Apr 3, 2025)
In time healing will come to me
Let patience in I sit with the sting
Lest an evil eye cast jealousy
All the time we spent is alchemy
Unique and very necessary
For me to be the best I can be
And there are so many ways to love
And what a shame to close most doors off
When we get sore
Where does it come from
When we get sore come on let’s be honest
Because what I’ve to gauge what I’ve to gauge
(first taste of salt)
Is whether we’re really adult
Although I’m whole (and it’s all good)
I cannot help breaking up
Cannot concentrate my lust
Crossing paths and lighting up
Crossing paths and get higher
Healing is really making surfaces
An interest in a new whetted edge
And slowing down strange messages
What’s this ache coming to my brim?
Threatening to split my world a thin film
True healing comes with growth at the stem
Excess abundance is what it is
And what a shame not to make good use of it
To be gentle curious
On a steady curve it
Unsteady

オーストラリア出身の兄妹デュオ、Angus & Julia Stone の2009年のアルバム「Down The Way」収録。今なお世界中で愛され続けているインディーフォークの金字塔。最小限のギターフレーズと囁くように重なり合う2人のヴォーカル。その静謐なサウンドは長距離移動や別れ、すれ違う感情といった距離の感覚を驚くほどシンプルかつ普遍的なかたちで描き出しています。タイトルにある「Big Jet Plane」は物理的な移動の象徴であると同時に心の隔たりや不確かさを映し出すメタファーとして機能しています。「Big Jet Plane」は派手な演出や過剰な感情表現に頼ることなく声とメロディだけで心を掴むことの強さを証明した1曲。
Angus and Julia Stone – Big Jet Plane
彼女は言った
「こんにちは、ミスター。はじめまして」
抱きしめたい
キスをしたい
彼女はデイジーの香りがした
デイジーの香りが
それが僕を狂わせる
どうしようもなくさせるんだ
大きなジェット機に乗せて
彼女を連れ出すつもりさ
大きなジェット機に乗せて
彼女を連れ出すんだ
ヘイ ヘイ
ヘイ ヘイ
恋人になってほしい
僕のレディ・リヴァー
君を連れていけるかな
もっと高いところへ
大きなジェット機に乗せて
彼女を連れ出すつもりさ
大きなジェット機に乗せて
彼女を連れ出すんだ
ヘイ ヘイ
ヘイ ヘイ